明日も精神科医

スポンサーサイト

Posted by kobayashi_kei on

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

変わる、コミュニケーション

Posted by kobayashi_kei on   0 trackback

- プロローグ

中学生の頃、ずっと好きだった同級生の女子に告白をし、生まれて初めてOKをもらったことがあります。

「すごい!やった!これであの子はおれの彼女だ!」という未体験の興奮と、「でもじゃあおれはこの先どうしたらいいの?彼氏とか彼女とかって一体何すんの?」という未体験の不安が怒濤のように押し寄せ、幸せいっぱいのお花畑の喜びというよりは、自分のいる現実が数分前とは根本からなにか大きく変化したような、なんともいえない怖さを感じた覚えがあります。

とにかくこの悶々とした好きという気持ちを伝えるだけでよかった、妹に借りて読んでいた少女マンガにも告白した後のプロセスは克明に描かれてはおらず、なんかデートしたりキスしたり揉めたりしてるけど、そこに至るためには何をどうすればいいかわからない。でもせっかくつきあうことになったんだし、相手も自分のことを好きだと思っているはずだ、嫌われたくない、嫌われないようにしなきゃ、嫌われないようにするにはどうすればいいんだ!?とまた悶々と考え始め、「とりあえず電話だ!彼氏彼女と言えば電話をするものらしい!」という発想に落ち着きました。

しかし、当時の私はこの電話というものが心の底から苦手でした。
携帯電話はまだ普及しておらず、さすがにサザエさんみたいなダイヤル式の黒電話ではなかったですが、受話器と本体はグルグル巻きのコードで繋がれており、電話様の鎮座する定位置でしか電話はできませんでした。
家族の多い家で育ったため、中学生が親や兄弟にばれずに女の子に電話するのは至難の業でした。できるだけ家族が一カ所に固まり動かない時間にそっと抜け出し、電話のある部屋に入り、電気もつけず、見つからないように見つからないようにと意識しながら受話器をとりました。

彼女の番号を一つ一つ押すたびに震える手、うるさいほどに高速で鳴る心臓、自分の顔面から血の気が引いていく感覚もわかります。彼女がお風呂に入っていたらどうしよう、絶対に見なきゃいけないドラマを見てる途中だったらどうしよう、友達が来ていたらどうしよう、そもそも塾とか行ってて家にいないんじゃないか?など、湧き上がる様々な疑念に怯えながら、電話番号の最後のボタンを押しました。

耳に鳴り響く発信音、あぁ、おれはもう後戻りできないところまで来てしまった。10回ほど鳴ったところで音は途切れました。「もしもし」。出た!!お父さん!よくわかんないけど最悪だ!

うわずる声で「あ…あ〜…、もしもし!◯◯さんいますか!?」と伝え、「かわります」と無愛想な声で言われ保留の音楽が流れました。今でもあの電子音で作られた"let it be"はほぼ完全に脳内再生できます。

「もしもし」念願の彼女の声がしました。とはいえ特にこれといって話したい内容はなく、おもしろい話題で盛り上がることもなく、その後、デートもキスもけんかもすることもなく、彼氏彼女の関係は始まることもなく、なんとなく終わっていきました。


この惨憺たるスタートラインから思春期男子の受けた傷は深く、私は悩み、試み、失敗し、また悩み、周囲から同情され、あざけられ、自虐的になりながらも、少しずつ成長していきました。そして高校生、大学生を経て、ついには他人のコミュニケーションを治療するような仕事をするようになりました。
同時に社会そのものも情報伝達分野で大きな成長を遂げ、固定電話は携帯電話となり、インターネットが普及し、チャット、Eメール、facebook、twitter、LINEなど、現在も生活におけるコミュニケーションツールは凄まじい勢いで変化しています。


人はなぜコミュニケーションを求めるのか、なぜコミュニケーションは難しいのか、そしてこの先コミュニケーションはどのように変化していくのか。誰もがより良いコミュニケーションができる社会を目指しているはずなのに、満足のできる到達点は遥か遠く、むしろ新たな問題の発生により現実はさらに混沌としているように思えます。


そんな現在と未来のコミュニケーションがどうなっていくのか。固定電話とフリートークが苦手な精神科医の視点から綴っていきたいと思います。
「変わる、コミュニケーション」しばらくの間おつきあいいただければ幸いです。

スポンサーサイト

Trackback

trackbackURL:http://ashitamoseishinkai.blog.fc2.com/tb.php/87-f26d1aac
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。