明日も精神科医

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Posted by kobayashi_kei on

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MMORPGの思い出

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少し前のことですが、興味本位でオンラインRPGというものに手を出したことがあります。

"ハマると怖いもの"、"ゲームが進むほどお金がかかるもの"という先入観にビクビクしながら、慣れないネットワーク接続や料金支払いの手続きを終え、オープニング後の最初の家から出たとたん、私は自分の目を疑いました。
「Loading...」の待ち時間の後、眼前に広がる夜の村。そこにはおびただしい数の"主人公"が、猛スピードでところせましと駆け回っていました。一瞬「何これ!?無双!?」と思いましたが、無双ではなく画面スミにはそれぞれのキャラクターの思念のようなテキストが流れ続け、各々が内側に本物の人間の意思を宿した主人公であることがわかりました。
現在のサーバーの処理能力の高さに感心すると同時に、バンドでいうと全員がギターボーカル状態の異様な世界にめまいを覚えました。勝手もわからず他の人に教えを請う勇気もない私は、極力まわりの人に迷惑をかけないよう、せっせせっせとゲームを進めていきました。それは、とても孤独な作業でした。

溜まらないお金、上がらないレベル、強すぎるザコ敵に相当なストレスを感じつつ、それでも「ゲームを進めていきさえすればなんとかなる」「ある程度成長したら、きっとまわりの人ともうまくやっていける」と信じて進めていきました。しかし思い返せばこの考え方自体が大きな誤りでした。


あるとき、ストーリーを進める上で重要なボスの討伐に行き詰まりました。一人では絶対に勝てないし、雇われのコンピューターキャラでは相手の戦術にまんまとハメられて次々と死んでしまう。パターンを見切って速やかに対処できる、人間の脳が必要な局面でした。
これまでレベル上げなど、当たり障りのない目的で他の人とパーティを組んだことはありましたが、こんな本格的にクエストに絡んだ状況での協力プレイは初めてです。うまくやれる自信はまったくありませんでしたが、オンラインゲームをやる以上避けて通れない道ですし、勇気を持って「ボス倒しにいく人〜」のコメントに乗っかってみました。

幸いにも数字的なレベルは自分と同じくらいで職業のバランスも良く、最初に「よろしくお願いします」とみんなで挨拶をしてくれるなど、和やかな雰囲気に多少緊張もやわらぎました。
しかし、ほっとしたのもつかの間、そこから先は衝撃の連続でした。

まず、なぜかみんな走るのがやたら速い。移動の速さは二段階しかないので設定上は同じ速さなのですが、ゲーム慣れしている人はルート選択に迷いがないのか、すぐに置いていかれてしまいます。あとしゃべるのも速い。ゲーム担当(プレイヤー)と会話担当(シュライバー)の二人一組でやってるのかと思うくらい、移動しながらぽんぽん会話しています。あれはインカムでもつけてるのでしょうか。そしてなにより、戦い方がまるで違いました。持っているアイテムも全然違うし、武器の威力や自身が受けるダメージの量も全然違います。見た目のレベルは同じくらいのはずなのに、自分だけ違うゲームから来たキャラクターのようでした。

明らかにパーティの中で劣っている私は次第に居心地が悪くなり、また他の人からの扱いもなんとなく雑になってきました。「早くして」とか言われたり、必死で会話に入り込もうとコメントをしても、それに対するレスポンスはありませんでした。
この感じ。自分は必死で頑張っているのにまったく成果を出せず、周囲から冷たくあしらわれるこの感じ、どこかで似たようなことがあったなと思ったら、研修医時代の救急センターが全く同じ状況でした。どうして自分は娯楽として始めたはずのゲームの中で、人生で五本の指に入る辛かった時代のことを思い出さなければならないんでしょう?

終いにはパーティの女性キャラ(たぶん男性)に「外れてもらってもいいかな?」とまで言われる始末。さすがにそれは他のキャラクターに止めてもらえましたが、引き止められたことで私のショックと惨めさはよりいっそう浮き彫りになり、ついには「俺は、実社会では立派に働いてるんだぞ...!」と絶対に持ち出してはいけないことまで危うく口に出してしまうところでした。ストレスがピークに達することで最終的に相手にストレスを与える存在になるという、某魔法少女が魔女に変身するようなプロセスまで体験できました。

そんなすったもんだがありましたが、なんとか目的のボスを倒すことができ(私は真っ先に死亡)、ストーリーを進める上で重要なアイテムも手に入れることができました。仲間の人たちも「おつかれさまでした。ありがとうございました。」と爽やかにお礼を言って別れることができました。
無事に目的を果たすことができ、マナーの良い頼りになる人たちとオンラインゲームの醍醐味であるプレイを堪能することもできました。しかし残念ながら私の心にはかけらほどの喜びも達成感もありませんでした。そこに残ったのは現実の仕事以上の気疲れと、焼き印のように刻みこまれた"情弱"の二文字だけでした。


「自分はこの世界ではやっていけない」と打ちひしがれた私は、誰に引き止められるわけでもなく、本体からディスクを抜きました。そして一週間ほど悩んだ結果、中古ソフト屋にディスクを持っていきました。しかし店員さんに「オンラインのソフトは買い取りできないんですよー」と言われました。


私の知らなすぎたあの世界は、きっと今日も、私のいない朝を迎えています。

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