明日も精神科医

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Posted by kobayashi_kei on

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多様性という一つの選択

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以前どこかの雑誌で「夢なんか持たなくていい」という内容のコラムを読みました。
「大人は若者に『夢を持て』と強調するけれど、無理に夢なんか持たなくていい。そのままの自分でいいんだよ」的な内容で、確かにその通りだなと思いました。"夢を持つ"なんて漠然としたことを強要する必要はないし、いくら夢があっても何の結果も出せていない人もいくらでもいます。
しかし大人たちからこういったことを言われた若者は「じゃあ結局どうすればいいの?夢を持てばいいの?持たなくていいの?」と悩んでしまいます。このときの大人の反応はたいてい「そのへんは自分で考えろ」です。


ある一つの価値基準を絶対的に良しとする風潮は廃れ、得られる情報量の増加と個人主義礼賛の風潮からか、膨大な選択肢の中から自分で最も適切なものを選び取ることを求められる時代になってきています。
書籍でもネットでも「常識を疑え」的な内容は受けが良く、不安を煽って安心を提供しない論調であふれかえっています。かくいうこのブログも「世の中を変な角度から眺めてみる」が裏のテーマであったりするため、完全に同じ穴のむじなではあります。

一つの価値基準が絶対でなくなったということは、そこにうまく適合できない人が救われる世界ということになります。例えばかつては全員が参加して一様に盛り上がることが求められていた会社の宴会に、パワハラ、アルハラなどの新語が持ち込まれ、「なんでお酌しないといけないんですか?」と臆面もなく言う若者が現れたりすることで、いわゆる理解のある職場では「まあ宴会は楽しみたい人だけ楽しめばいいか」という流れになります。
私みたいな飲むとてきめんにテンションの下がる人間にとってはありがたい風潮なのですが、チームワークを重んじる職場ではやりにくい流れだと思いますし、逆にそうした新しい観念を持ってしまったことで古い風潮が根強い社会に適合できず、ストレスを溜めてしまう人が出てくるのも事実です。
結局どのような状況下でもあぶれる人はあぶれてしまい、"新型うつ病"のような新しい病名が現れてくるのかなと悲観的な見方をしてしまいます。

また、自由に物事を決めていい世界というのが、自由に物事を決めなくていい世界かと言われたらそうでもありません。
「夢なんて持っても持たなくてもいいんだよ」と言われながら、本当に何もしなかったら怒られます。
誰もが自分のやりたいことを適切に選択できる訳でなく、選択肢が増えれば増えるほど決めきれなくなるのは当然です。
かつてのように「大学いって大企業に就職して結婚して子供つくってマイホームつくってそして死ぬ」が幸せのロールモデルであるとは誰も思っておらず、「何が幸せかなんてわかんないけど、とりあえずお前の幸せを望んでいるよ」と丸投げされた側がどうしていいかわからずに生き辛さを感じるのも当然のことです。
10代のうちに自分の生きる目標が決まっている人はいまや珍しく、「そんなに早く決めちゃって大丈夫なの?」と逆に心配されるような状況です。30近くなってもフワフワしてる人の方がよほど心配ですが、現在はそっちが圧倒的にマジョリティです。
トップダウンに強制的に決められる生き方を窮屈に感じ、自由に選択できる人生を求め、ある程度の実現が果たされている気がしますが、それが必ずしも幸福をもたらしているわけではなさそうです。自殺者が3万人を超えてから横ばいであるのも(最近少し減ったみたいですが)、決して絶望の度合いが上がったわけではなく「絶望の結果死に至る」ことが一つの選択として生きることと並列の価値を帯びてきたのかもしれません。肯定するわけではありませんが。


結局のところ「自由な選択肢の中で生きる」も「決められたレールに乗って生きる」も選択可能な生き方であり、どちらが正しいという訳ではありません。多様性もまた一つの選択肢であり、一元的な考え方も一概に否定されるものではないと思います。

かつてカツオが「ぼくは電車の中でシャツのボタンがとれかけた人を見つけて、そのボタンを付ける仕事をする!」と宣言したように、血迷った夢を語りだしたら全力で阻止すべきですが、「夢がない」という人に「それならもう少し探してみたら」と言うことも間違った選択肢ではないはずです。

よけいややこしくしただけですね。


現代うつ病の臨床現代うつ病の臨床
(2009/08/08)
神庭重信、黒木俊秀 他

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