明日も精神科医

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Posted by kobayashi_kei on

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選択する自由

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「こうしましょう」と言われるのと、「こうしますか?どうしますか?」と聞かれるのでは全く印象が異なります。

臨床現場ではかつては前者が主流でしたが、最近では後者を良しとする流れになっています。
治療を行うメリット・デメリットについてきちんと説明し、最終的に患者さんの同意によって決定する、いわゆるインフォームドコンセントの考え方です。

丁寧な説明を行い、しっかりと理解してもらうことで患者さんの治療への理解と満足度が上がり、また何かトラブルがあったときに医師が信頼を失ったり社会的な制裁を受けてしまうリスクを回避することができます。


こう説明するとなんだか良いことずくめのインフォームドコンセントですが、突き詰めていくと実はそうでもないことに気付きます。患者さんは真の自由を与えられているわけではなく、医師も完全にリスクを回避できているわけではないのです。

例えば「AとBという治療法があり、それぞれにこうしたメリット・デメリットがありますが、どちらにしますか?」と聞かれると受け止められる気がしますね。
しかし「AとBとCとDとEとFという治療法があって、Aにはこうしたメリット・デメリットがあり、Bには…(略)があります。組み合わせも自由で複数の治療を同時に行うことも可能です。その場合AとBでは組み合わせたことによる相互作用があり…(略)。さあ、どうしますか?」と聞かれたらどうでしょう?
大抵の場合「よくわからないので先生にお任せします」となります。残念ながらこれではインフォームドコンセントは成立しません。

実際どの科の現場でも可能な治療法が一者、二者の択一になることはほとんどなく、膨大な選択肢の中から医師が選択して患者さんに提示しているのが実情です。
ですから真にインフォームドコンセントを追求するならば、後者のように考えうるすべての選択肢を提示して説明し、それらを全部理解してもらった上で同意を得なければいけないのですが、それは医者側からも患者さん側からも不可能なことは明らかです。

押し付け型のパターナリズムから責任回避型のインフォームドコンセントに時代が変わったとしても、専門知識を持たない患者さんにその全てを委ねることはできず、医師が十分な知識と自信を持って選択肢を減らす責任を負うことに変わりはありません。100%同じ知識と思考を共有しない限り完璧な説明と理解をすることはできず、人間はまだそこまで進化していません。
自分ではベストの説明をしたつもりでも、選択肢を絞っている限りは「なんでこの治療法については説明がなかったんだ!」と責められることもあります。ややこしい仕事です。


ある実験で6種類のジャムと40種類のジャムを同じお店の別の売り場に並べたところ、6種類のジャムの方がトータルの売れ行きは良かったそうです。過剰な選択の自由を与えられると、選ぶ側は選ぶ気そのものを失くすという傾向を表しています。
もしあなたが相手に反発されそうなことを提案したいのであれば、それを直接訴えかけるのではなく、死ぬほど多い選択肢を与えることである程度心を折ってから提案するとうまくいくかもしれませんね。

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