明日も精神科医

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ドラえもんと睡眠

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ドラえもんほど睡眠というテーマを多岐にわたって取り上げた作品はありません。

主人公のび太の睡眠に対する執着は凄まじく、「1,2,3、グウ」と0.93秒で睡眠状態に移行できる驚異的な寝つきの良さ、睡眠時間も1日12時間と、マンガの主要キャラとは思えないほど眠ることに対して情熱的です。
またドラえもんは押し入れで寝たり、スネ夫はおねしょをする癖があったり、ジャイアンは夜中に寝ぼけてパジャマ姿で徘徊したりと("睡眠時遊行症"と言います。ハイジと同じですね)、各々に睡眠にまつわる特徴づけもされています。
また睡眠に関する未来の道具も様々であり、眠気を完全に取り去る薬、人の眠気を吸い取って発射し、別の人を眠らせることのできる銃、他人の夢をのぞき見て入り込むことができる機械など、バラエティに富んだ物語を展開しています。

そうした睡眠にまつわる一編として今回は「夜の世界の王様だ!」というお話を紹介いたします。


ある日ののび太の部屋。のび太はドラえもんに向かって主張します。「学校から帰るだろ、つかれているから昼寝をするだろ、」「それから友だちと遊ぶとまたつかれてねるだろ、」「夕食のあとはテレビだ、むちゅうでみるだろ、」「終わるころにはがっくりして寝るだろ、」「これじゃ、勉強する時間がないのもあたりまえだ。」
ドラえもんはバッサリと返します「いや、そのりくつはおかしい」(一時期このパロディがネット上に大量に出回りました)。しかしのび太はひるまず続けます。「まあまてよ、そこでぼくは考えた。」「ようするに、ぼくはねすぎるんだ。二十四時間の半分はねてる。」「ねてる間は死んでるのと同じこと、じつにむだな時間だ。」「もしもこの時間を全部おきて使えたら、」「ぼくは二倍生きることになる」「でもまさかそんな薬ないよねえ。」

ドラえもんはまたも端的に返します「あるよ」。「ええっ あるう!?」と正座したまま大ジャンプして喜ぶのび太。「でもそんなもん使う人いないぜ。ばかばかしいから」とクールにあしらうドラえもん。
「ばかばかしいことあるかい、こんないい考えが。やってみたいんだ、その薬、くれよ、ねえねえ。」とせがむのび太に「わかったよっ」とドラえもん。相変わらず薬の管理はどうしようもないほどずさんです。
「ひとつぶ二十四時間!ねむくもならないしつかれもしない」とふくろうの絵を描いた瓶に入った錠剤をドラえもんは出し、のび太は何の迷いもなく満面の笑顔で服用します。ドラえもん「やめればいいのにな。」

夜が更け、両親もドラえもんも寝てしまい、いよいよのび太の異常覚醒生活がスタートします。「時間はたっぷりあるんだ、計画を立ててむだなく使おう」「十時から二時まで…四時間勉強する!!四時間も!ムヒョー。ぼく、日本一の秀才になれるかも。あと六時までの四時間を遊ぶ!!たっぷり遊べるぞう。」と笑いながら独語するのび太。机に向い勉強をしますが、いまいち集中できません。鼻くそをほじりはじめ、「あとひとつぶで一ダース!!」と謎の遊びを始めます。「なにやってんだ。勉強!!」と鼻くそを手で払いのけ、我に返りますがそれでもはかどらず、影絵で遊んだり夜食にラーメンを作ったりしますが結局適当な理屈をつけて勉強をやめてしまいます。
勉強を諦めたのび太は「遊ぶぞう!四時間たっぷり。」と両手をばたつかせて部屋の中を走り回りながら遊びことを決意します。どうも気になるのですが、このあたりの描写が覚醒剤による気分の高揚と集中力の低下にしか思えません。

部屋の本を読み返してみたり、本を並べてドミノ倒しをしてみますが、一人で遊んでも全然楽しくない。退屈に耐えかねたのび太は一度ふとんに入りますが、当然まったく眠れず。結局寝ているドラえもんを叩き起し、"ムユウボウ"という道具(寝ている人を寝ながら起こす道具)を出してもらい、寝ているドラえもんを寝ながら起こして家の外へと飛び出します。「静かだなあ。おきてるのはぼくだけだ。ぼくは、この夜の世界の王さまなんだ。」と大騒ぎしながら闊歩するのび太。ドラえもん「グウ」。
「なんでもできるぞ。ひるまはしかられるようなことでも。なにしろ、ぼくは王さまなんだから。わっはっは。」とやはり病的なハイテンションで道端に大の字に寝てみたり、道いっぱいに落書きをするのび太。「どうも…、思ったよりつまらないな」とすぐに飽きてしまいます。ムユウボウで友だちを寝ながら起こし、みんなで野球をすることにします。基本的にみんなのび太のいいなりなので、ジャイアンにピッチャーをやらせ、のび太はバッターボックスに立ちますが、バットはボールにかすりもせず。みんなに寝ながら笑われます。
「あたるまでぼくが打つ。」と命令し、何度も挑戦しますがなかなか当たらず、「昼間やってもだめなことは、夜にやってもだめだなあ。」と妙に意味深なセリフを吐きます。なんとかポコとバットに当てますが、今度は当たりが良すぎて近所の家の窓ガラスを割ってしまいます。蜘蛛の子を散らすように逃げだす友人たち。のび太も咄嗟に逃げようとしますが「いや、それはよくない。正直にあやまらなくちゃ」と中途半端な正義感を発揮。家主さんをやはり寝ながら起こし、グウグウとしか言わない家主さんに適当に謝ってことなきを得ます。

友人もいなくなり、再び一人街をさまようのび太に、冷たい夜風が吹きつけます。「うう寒いっ!なんだかあほらしくなってきた。なんでぼくはこんな夜中にうろついてんだ?」「あったかいふとんでぐっすりねる!こんな楽しいことがほかにあるか。」と両手を上げて叫び、ドラえもんを叩き起して薬の効果を消す薬を出させます。

翌朝の通学風景。ジャイアントスネ夫が「えっ?きみもみたの?夜中に野球やったゆめ」「ふしぎだなあ」と昨夜の奇妙な体験について語り合い、その横をのび太はそ知らぬ顔であくびをしながら歩いていきます。




このお話、ドラえもんがのび太に出したのが明らかに覚醒剤であることやムユウボウの恐ろしさはともかくとして、やはり最後の「あったかいふとんでぐっすりねる!こんな楽しいことがほかにあるか」のセリフに物語のテーマが集約されていると思います。

睡眠と食事は精神科診療において非常に重要であり、診察の上でも必ず問診する項目となっています。単純な睡眠障害、いわゆる不眠症だけでなく、統合失調症やうつ状態、躁状態等、精神疾患の大半で睡眠リズムの崩れが早い段階で生じるため、とても重要な指標です。
実際に動物実験でも睡眠を奪われたマウスは食事を奪われたマウスよりも早死にするという報告もあるらしく、精神状態のみならず、生命活動の維持にも大きく関わっています。
また睡眠による快楽、不眠による不快感は人間にとって著しいものであり、現代の睡眠剤の代表格であるベンゾジアゼピン(ハルシオン、デパス、レンドルミンなど多数)は耐性、依存傾向も認めるため、精神科医として処方には十分な注意が必要です。

睡眠自体は純粋な生理現象なのですが、睡眠時の精神状態についてはまだまだ未知の部分が多いようです。睡眠は純粋な休止状態ではなく、脳波は覚醒時とまったく異なるダイナミックな変化を見せ、また夢という奇妙な現象を私たちは体験します。
大脳皮質での記憶やイメージの表象化と言えばそれまでなのですが、かつての精神分析学でも夢の内容が深層意識に関わっていると考えられるなど、覚醒時とは異なった独自の精神状態として、今でも数多くの研究者を魅了し続けています。


今回紹介したお話ののび太のように、ほとんど寝ずに活動し続けても平気な人たち、いわゆる"ショートスリーパー"という概念も世の中に浸透しつつあります。こうした人たちも少ないながらいるようですが、やはり大半の人たちは適切な睡眠を取らなければ体調を崩し、精神的にも不安定になり、仕事や生活に大きな支障をきたします。
日本人固有の特徴なのかは知りませんが、「昨日は2時間しか寝てなくてさー」などの"寝てない自慢"をする人は多いです。なにかを無理して一生懸命やっていることのアピールなのかもしれませんが、自己の睡眠もちゃんと管理できないような人間がそんなにいい仕事ができるとはとても思えません。あの風習はやめていきましょう。


毎日の行為であるためそのありがたみを忘れがちですが、あったかいふとんでぐっすりねる、こんな楽しいことはほかにありません。
人生の1/3~1/4は眠って生きています。毎日の睡眠を楽しめている人は、それだけで誰よりも幸せです。みなさんも良い睡眠を。


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