明日も精神科医

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悩む

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悩んでいます。みんな悩んでいます。
もっとお金をかせぐにはどうすれば、もっと良い暮らしをするにはどうすれば、もっとモテるためにはどうすれば、もっとあの人と仲良くするにはどうすれば、もっと健康になるためにはどうすれば、人間の欲望は果てしなく、悩むための要素はいくらでもあります。
「誰もが 誰よりも 一番悩んでる」はある曲の歌詞ですが、まとを得ていてすごく好きなフレーズです。悩みを抱えている人にとって一番の悩みは自分の抱えている悩みであり、他人の悩みなど正直なところどうでもいいというのが実情です。


病気というのは多くの人が抱える悩みの代表格です。たいていの病気は自分の意志とは無関係にイレギュラーなタイミングで生じ(自己責任の病気もありますが)、確実に人生の質を下げ、将来の可能性を奪ってきます。治すための懸命な努力や本人の回復力によりすっきり治ることもありますが、治らない時もあります。治らなければ不調を抱えたままでさらに引き続き治そうとし続けなければならず、入院や薬の副作用などで新たな苦しみが生じる場合もあります。
生物が生物である限り機能的な障害が起きる可能性を避けることはできず、長く生きれば生きるほどそのリスクも上がることから、まさにこれほど悩ましい問題もないといえるくらいの悩みです。

その一方で、"悩むこと"そのものも病気を引き起こしてしまいます。悩みを抱えることは紛れもない精神的ストレスであり、悩み過ぎることは確実に心も身体も疲弊させてしまいます。悩むことでの不安の高まりからパニックや対人恐怖を生じることもあり、うつや希死念慮に繋がることも珍しくありません。
いわゆるうつ病の場合は精神的な落ち込みが先行することから、悩みを自ら追い求めるような傾向すらあります。自分の家にはお金がない、自分は何の価値もない人間だ、自分はなにかの病気に違いないと、これまでの実績や事実とはかけ離れた妄想的な悩みを抱え、訂正できないその悩みは周囲の人間をさらに悩ませてしまいます。

病院は常に悩みで溢れかえっています。

そして患者さんの悩みに対して、医師も悩みます。何に対してそんなに悩んでいるのか、診断名は何か、どんな治療が良いか、治ったあとでどのようなフォローをしていけばいいか、患者さんの悩みは一人一人異なっており、治療法は一律ではありません。人によりその時々により変化する患者さんの悩みにこちらも頭を悩ませ、なんらかの回答を提示しなければなりません。

そんな仕事を毎日していて、思い当ったことがあります。患者さんに限らず人の悩みを聞く際に「いっしょに悩む」はとても有効な方法であるようです。
例えば自分の全然知らないことを質問されたとき、「ごめんなさい知りません」と答えるのと「う~~~ん、ちょっと分かんないですね、ごめんなさい」と答えるのではだいぶ印象が違います。
前者はかなり突き放されたような印象を与えるのに対し、後者は何かしら一緒に悩んでくれた印象を与えてくれます。
悩みを打ち明けることはその人にとってかなりの勇気を要する行為であり、打ち明けられた相手のリアクションというのは非常に細かい部分まで観察されていると考えた方がいいようです。
「自分の悩みをいっしょになって悩んでくれた」という気持ちは安心と信頼感を与え、さらに具体的な悩みを共有することができます。逆に「この人は自分の悩みをまったく悩んでくれない」と思われてしまうと、悩みを打ち明ける価値のない対象であるとみなされたこととなり、そうした状況の中で精神科的治療関係を結ぶことはほぼ不可能です。
患者さんもそうした探りを入れるためにいきなり核心をつかずに、ジャブのような悩みから話されることもあります。そのジャブの悩みをその場で解決させたことに満足せず、「その程度の悩みでわざわざ精神科に来るはずがないだろう」と変なうたぐりを入れて、さらに深い悩みまで共有しようとすることが大切です。

ただいかんせん経験を積むごとに、似たような悩みや疑問に対して即答できるケースも増えており、患者さんも多いことから作業効率を上げたくなる欲求にも駆られてしまいます。それでもできるだけスピーディに終わらせたい気持ちをぐっとこらえて、一回「そうですねぇ…」とか言いながら言葉を探して回答するのは普段からしているちょっとした気配りです。プライベートなメールの返信ですら「うーん」とか書いてしまいます。

悩みに対してクリアカットな答えが提示できれば素晴らしいですが、自分の提示した答えと悩んでいる人の求めている答えが違っていることがほとんどです。
むしろ悩みを聞いてもらえること、そしてその悩みを共有してもらえることが悩んでいる人にとっては大事なのかなと思います。
誰かの悩みに対して簡単に答えを示すことができなくても、「~~といったことで悩んでたんですね」と返すだけでその後の流れは全然違います。全くのおうむ返しでもいいのでぜひ試してみてください。

そして私が悩んでいる時にも一緒に悩んでるフリしてだらだら聴いていただければ幸いです。

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