明日も精神科医

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嘘と妄想

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ドラえもんの数ある話の一つに、「世の中うそだらけ」という作品があります。

あらすじを説明すると、

おやつのために50円と100円のアイスを買いにいくのび太。帰り道にジャイアンに遭遇。ジャイアン「買いに行くのがめんどくさいから」と50円のアイスをその場で買い取ろうとする。しぶしぶ50円と引き換えにアイスを渡すのび太。しかしジャイアン「やっぱり100円のアイスにする」とさらに交換。当然のび太は「残りの50円を払ってほしい」と要求する。しかしジャイアン「いまおれは50円を払って50円のアイスを買った。そして100円のアイスと交換に50円のアイスをお前に渡した。最初の50円とアイスの50円、合わせていくらだ?」と説明。のび太「ちょうど100円!」と納得、帰宅する。

ピタピタ、ペタペタと夢中でアイスを舐めるのび太を見てドラえもん「むじゃきというか、おひとよしというか。正直者がバカを見る時代なんだから。なんとかしなくっちゃ」と案じ、飲むと人を信用しなくなる薬"ギシンアンキ"をポケットから出し、「ああ、うまかった」と大口を開けたのび太の口に放り込む(!)。

画像1飲んだとたんに顔つきが変貌するのび太(画像)。「やっぱりおかしい」とジャイアンに直談判しに行く。「かるい冗談だ、50円返すから」と笑顔のジャイアンに対し「50円じゃない100円だろ」とのび太。
「なに言ってんだ?このバカ」とストレートすぎる感想を述べるジャイアンに「あれから考えぬいたんだ。きみからもらったのは50円玉1個だ。こっちが渡したのは50円と100円のアイスだ。最初の50円のアイスは初めの50円とあわせて100円のアイスの代金になるんだ。だからもらっていないのと同じだ。渡したのが100円と50円のアイスで合計150円。もらったのが50円。さしひき100円すぐよこせ!100円よこせ。さあよこせ!」と拳を振り上げて主張するのび太。あまりのややこしさに議論が面倒になり「うるせえ!」とのび太の顔面にめりこむジャイアンの鉄拳!

一方ののび太も「ゲンコツなんかで引き下がらない!ぼくはお人よしすぎた。もうごまかされないからな」とジャイアンに食い下がる。あまりに常軌を逸した迫力に逃げるジャイアン。迷わず捜索するのび太。「ジャイアンなら向こうに行ったよ」と教えるスネ夫に対しても「うまいこといってその手は食わないぞ。わかった!きみがジャイアンだ。変装してんだろ」とスネ夫の顔面の皮を剥ごうとするのび太。スネ夫「キャーたすけて」。
その後も世の中のすべてを否定しながら我が物顔で街を歩くのび太。道路標識すら信用せず、工事現場の穴に落下する。

あまりの疑心暗鬼ぶりに失敗を悟ったドラえもん。飲むと素直になる薬「スナオン」を処方。服用し素直になるのび太。
最後はジャイアンに「おれは50円しか払わない。しかしよく聞け。この50円はおもての模様がうらについている珍しい50円玉だ。100円のかわりにやろう。」と言われ、のび太は「もうかった もうかった」と大喜び。



凄まじいスラップスティック。これがわずか10ページの漫画に収められていることに感動すらおぼえます。

さてこの話について、注目する点が3つあります。
① ジャイアンの嘘
② ドラえもんの出す薬
③ のび太の嘘(?)
の3点です。

まず①ジャイアンの嘘。これは非常に巧妙です。アイスを要求するところから50円をごまかすところまで、計算してやっていたとしたらかなりの発想力と柔軟性が要求されます。いつもは粗野で支配的な暴君タイプのジャイアンが、妙な知恵者であることを印象付けるシーンです。詭弁を弄した後に「かるい冗談だよ、おこるな」といなそうとするあたりにもリーダーとしての鷹揚さを感じることができます。

それを受け、ドラえもんの薬で変容するのび太。

そして③のび太の嘘ですが、果たしてこれを嘘と言っていいのでしょうか?ジャイアンがのび太に追加で返さなければいけないのは50円であり、100円を要求するのび太の理屈は現実的には間違っています。しかしのび太としてはジャイアンを騙そうとする気は全くなく、心からそう信じきった上で要求している。どんな訂正や暴力にも屈しません。

これを精神医学では"妄想"といいます。

辞書によると「妄想とは、非合理的かつ訂正不能な思いこみのこと。妄想を持った本人にはその考えが妄想であるとは認識しない(病識がない)場合が多い。」とあり、まさにこのケースに当てはまっています。

一般的にも「あいつは妄想癖がある」「今のは私の妄想です」などと使われることがありますが、それは病的な意味での妄想ではなく、空想や具体的な願望であることがほとんどです。

この妄想。精神科では非常に一般的な症状で,
統合失調症、抑うつ状態、躁状態、薬物依存症などで広く見られます。
内容も実に様々で、被害妄想、誇大妄想、貧困妄想、心気妄想、微小妄想、宗教妄想、発明妄想、嫉妬妄想、憑依妄想、皮膚寄生虫妄想、妄想知覚、妄想気分、妄想着想など多くの名称が与えられています。

今回のケースは猜疑心の極端な増加による被害妄想の一種と考えられますが、精神運動興奮、暴力行為に発展しており、自身も外傷を負っていることから入院が必要なケースと考えられます。おそらく隔離も必要になるでしょう。

そして実際に妄想を持った人との向き合い方ですが、直接対峙しても互いに疲弊するだけであり、まったくと言っていいほど成果は得られません。
まずは聞くことが重要です。否定も肯定もせず、ひたすら聞く。ときどき軽い反論をし、相手の妄想がどこまで深いのかを探ることもあります。
そうすることで心の状態を把握し、なにがそのような妄想へと駆り立てているのかを知ることが、診断や治療に繋がる大事な要素となります。

治療としては薬物治療が主体ですが、疾患や症状の度合いによってはカウンセリングや行動療法、電気けいれん療法などが適用になることもあります。
明らかに妄想に左右され、生活に支障が出ている場合は、精神科にご相談いただければと思います。


最後に②ドラえもんの薬について。この作品には非常に多くの薬物、脳に作用する機械が登場します。被験者はだいたいのび太で、ろくな説明もなくいきなり使用することがほとんどです。
22世紀にもなると現在の精神症状ですら娯楽の一部として用いられ、小学生にも気軽に用いられているようです。
おそらく脳科学のほぼすべてが解明され、ピンポイントで作用する薬と、その作用を瞬時に打ち消すことができる薬が開発されているのでしょう。


そんな未来まであと100年。精神科医は全員廃業しているかもしれません。とても楽しみです。

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まとめtyaiました【嘘と妄想】
ドラえもんの数ある話の一つに、「世の中うそだらけ」という作品があります。あらすじを説明すると、おやつのために50円と100円のアイスを買いにいくのび太。帰り道にジャイアンに遭
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