明日も精神科医

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Posted by kobayashi_kei on

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幸福な気分

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マンガにおける効果音表現は、状況や感情を演出するのに不可欠なものとなっています。
背景に書き込まれた「ドカーン」という文字は爆発を表現し、「シーン…」という文字は静寂を、「ドキドキ」という文字は緊張による鼓動の高まりを表すなど、そのバリエーションは非常に豊かです。

独自の効果音を用いる作品として"ジョジョの奇妙な冒険"(いつかなにかしら書きたいです)の「ギャ~~~~~ン!!」や「メメタァ」などは有名ですが、"ドラえもん"においても印象的な効果音はいくつもあります。例えば

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これ。しょぼくれていることを表現するのにこれほど適切な効果音が他にあるでしょうか?ライトな集中線がまた必要以上のインパクトを与えています。

このいろいろと問題がありそうな男性。"ハッピープロムナード"というお話で登場します。


0点を取って気が重いのび太。家に入るとママに怒られるので、気晴らしにとしずかちゃんの家に遊びに行きます。しかししずちゃんもショボーンと落ち込んでおり、理由を聞くと「テストで85点しか取れなかったからママにしかられた」とのこと。「じゃあ自分はなんなんだ」とさらに気落ちするのび太に追い討ちをかけるように上述のしょぼくれた男性が現れます。
「あのう…、だめだろうなどうせ。百科事典のセールスマンです。買ってくれませんか。勉強の役に立ちますよ。君の成績も少しは上がるかも」と持ちかけますが、当然のび太は憤慨して断ります。「やっぱりね…。いままでだあれも買ってくれた人なんていないもんね。もう世の中がいやになった」と吐き捨ててヨロヨロと去っていきます。

どうしようもなくネガティブな大人に中てられてさらに落ち込むのび太。なにもかもが嫌になります。うつぶせに倒れこんで起き上がらないのび太にドラえもんは励ましの言葉をかけますが一切響きません。
「おやつでも食べれば気が晴れるさ」「はれない」
「しずちゃんが来た」「うそ」
「火事」「地震」「・・・・・」
もうリアクションする元気すらなくなっています。

「心が重くて立てないらしい」と見かねたドラえもんがとり出したのが"ハッピープロムナード"という名前のじゅうたんのような道具。「この道を向こうからこっちに歩いてみな」とのび太に指示します。
半信半疑で歩道の絵が描かれた上を歩くのび太。上に乗っただけで気持ちがスーッと軽くなり、一足進むごとにゆかいになり、渡り終わるころには「ワーオ。楽しいなあ。ウキウキしちゃってもう、大声で歌いだしたい気持ち」と、一瞬にしてとても陽気な気分になります。

喜んだ二人は「しずちゃんも明るい気分にさせてあげよう」と、しずかちゃんも同じように渡らせてあげます。ところが一足ごとに明るい気分になるはずが、さらにどんどん暗い気分になり途中でしゃがみこんで泣き出してしまいます。「あ~っ、向きをまちがえた!あべこべに歩くと暗あい気持ちになるんだ」とさらに逆方向に歩かせてあげます。するとやはり大声で歌い出すほどの元気になりました。

ついでに例のしょぼくれたセールスマンにも使ってあげます。すると「ごめんください!おもしろくてためになる百科事典!」とすっかりハイテンションになり、「売れました!」と大喜び。

最後は0点を取ったのび太に対して激怒しているママにも渡らせてママの怒りすら鎮めるのですが、うっかり3人ともハッピープロムナードを逆戻りしてしまい「世の中いやになった」とみんな泣いて、おしまい。



いい道具ですね。以前に紹介した"ヘソリンガス"よりも依存性が少なそうで、しっかりと元気にしてくれる印象です。

さて、このお話でもわかるように、気分は人間の生活を大きく左右するものです。どんなに恵まれた環境でも気分が落ち込んでいればなにも楽しくないし、逆にどんなに過酷な状況でも気分が明るければストレスなく過ごすことができるかもしれません。

気分や感情には快・不快、喜び、悲しみ、怒りなど様々なものがありますが、大きく2種類にわけることもできます。プラスの気分とマイナスの気分です。

マイナスの気分が強くなり過ぎることを"抑うつ状態"といいます。気分が落ち込み、わけもなく悲しくなり、自分はなにもできない人間であるという妄想に陥り、実際になにもすることができなくなってしまいます。前半ののび太やしょぼくれたセールスマンの状況ですね。

一方でプラスの気分が強くなったのが、ハッピープロムナードを渡った後の状態です。気持ちは明るくなり何をしても楽しくなり、セールスにも積極的になるため仕事もうまくいくようになります。
このお話でも肯定的に描かれていますが、マイナスの気分でいるよりはプラスの気分でいる方が、明らかに人生は幸せなものとなります。しかし、このプラスが行き過ぎてしまうとどうなるでしょう?しょぼくれたセールスマンのその後を例にとって考えてみましょう。

テンションが上がって自信を持ったセールスマンはどんどん売上を伸ばします。次々と成績を上げることで最初は本人も会社の人も喜びますが、だんだんとその自信は過剰になってきます。
過剰な自信による慢心は、人の意見を聞かなくさせます。百科事典の購入を断ろうとする人に対して強引で威圧的な態度をとるようになり、クレームやトラブルが増えてきます。上司に叱責されますが、聞く耳を持ちません。自分のやり方が一番正しいと思い込んでいるので、否定されるとすぐに逆ギレをするようになります。極端におしゃべりになり、相手の意見の上げ足をとったり思いつく限りの自己主張をし続けて周囲の人間を振り回し、疲弊させます。
睡眠時間は減り、食事を取らなくても平気になります。性欲や消費に対する欲求も高まり、買い物に対する計画性はなくなるため、下手をすれば数千万単位の浪費をして破産することも珍しくありません。
節度を持った社会生活はできなくなり、周りとの協調もとれなくなります。しかし本人はいたって元気で絶好調だと思い込んでいるため、自分がなにかの病気であるという自覚は一切ありません。心配した家族は病院に連れて行こうとしますが、素直に応じることはまずありません。

これがいわゆる"躁"の状態です。私もこの仕事につくまで本当の躁状態の人と直接会ったことはなかったのですが、険しい表情、桁外れの言葉数、動きの激しさ、笑っていたと思ったら一瞬で激怒する爆発性、極端な聞き分けのなさと、凄まじいエネルギーのほとばしりにある意味で感心させられます。病気の説明、薬を飲むことの説明をしますがまったく聞き入れてもらえず、話しているだけでこちらのエネルギーのほとんどを奪われてしまいます。
二転三転する相手の理屈に振り回されると話が全く進まないため、淡々と正論のみを伝え続けることが大切です。


しかしこの躁状態、うつのように延々と続くことはそうはありません。エンジンが止まったままでいることはありますが、オーバーヒートし続けたままで永久に走り続けることはできないことと同じで、エンジンの方が限界をきたし、結局は止まってしまいます。
躁状態の人の大半は極端な抑うつに陥ることが多く、いわゆる"躁うつ病"の診断となります。単極性の躁病というのは滅多におらず、大抵が極端なプラスとマイナスを行ったり来たりすることに苦しんでいます。
心因的なものというよりはやはり脳の病気である印象が強く、薬物療法が大きなウエイトを占めることになります。難治性の場合や躁とうつが同時に来ている混合状態等の場合は、電気けいれん療法も有効な治療法です。


躁うつに限らず、多くの人がプラスの気分とマイナスの気分を繰り返しながら生活しています。嬉しいことがあればプラスになるし、つらいことがあればマイナスになります。
マイナスがあることでプラスの価値は相対的に上がり、これがそれぞれの幸福感に繋がります。全部大吉のおみくじやみんなが一等賞のかけっこなんてまったく面白くありません。

人生を楽しいものにするためには、基本姿勢として"全体にややプラス"くらいが一番いいのではと思います。そのためにはフラットな日常に幸福と感謝の気持ちを込め、ささやかな出来事にも喜びを感じ、つらい出来事に対して落ち込み過ぎないように生きていきたいところです。


2013年、初春のお慶びを申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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