明日も精神科医

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言うべきでないこと

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私事ですが。「今まで言うのをガマンしてたけど、あなたって…!」みたいな会話の流れが本当に嫌いです。

たいていの場合、相手の立場が不利なときや言い合いになる寸前に言い放たれることが多く、ここぞとばかりにこちらに対する不満を挙げ連ねることで優位に立とうとする算段なのかもしれませんが、まぁ何の意味もありません。こちらの負の感情を煽りたてることで険悪な状況がさらに悪くなるだけです。
「なんでこのタイミングでそのカミングアウトなの??思ってたんならそのとき言ってよ!?」という困惑と腹立たしさと相手の思慮の浅さに、怒りを顕わにするのが下手な私はだいたいとても悲しそうな目になってしまいます。


そんな私の汚れたプライベート情報はともかくとして(昔の話です)、患者さんに対して何を言って何を言わざるべきかということは、どんなときも非常に気を遣います。仕事で消費しているエネルギーの大半がここに割かれているのではないかと思うほどです。
基本的に患者さんのストレスになるような話はしないほうがいいのですが、ときにはそのストレスを乗り越えてもらうような話もしなければいけません。その塩梅が非常に難しい。
話す内容、表現、話し方、タイミング、患者さんの病状、性格など、刻一刻と変化する様々なパラメータを意識しつつ、その時その場に最も適した話を選ばなければならないのです。


例えばうつ病の人に「がんばれ」と言わない方がいいというのは、最近ではよく知られたところです。
しかしこれも一律に「がんばれ」と言わなければいいわけではありません。これは単にうつ病という概念が浸透する前に、病気ではなく単なるサボりや甘えであると誤解した人たちが「もっとがんばれ気合いだ根性見せろ」と無理強いをしたせいで病状がさらに悪化してしまうという現状を見かねた、ある種のキャンペーンです。
なのでうつの人がこの先ずっとがんばらなくていいわけではないし、周りの人もがんばらせなくていいわけではありません。

うつの人であっても時にはがんばったほうがいい場合もあります。もともとうつ病はまじめで常にがんばり過ぎてしまう人がなることが多く、"がんばりたいけどがんばれない"ことが本人を苦しめています。なので基本的には休養を取り、疲弊した心を休ませてあげることが大切です。
しかしうつが長引いている人の中には、長期の療養のために身体も心も鈍ってしまい社会復帰がなかなか進まなくなっているケースも多くあります。車の発進や機械の立ち上げもそうですが、休んでいたものを再び動かし始めるためには多大なエネルギーを消費します。休んでいた期間が長ければ長いほど自分一人の力で動き出すことは難しく、周囲の後押しが必要になってきます。
「もう少しがんばってみましょうか」と話すのは、まさにこういったときです。


うつ病でなくとも、世の中には言葉に対して敏感な人が大勢います。ある種の発達障害や人格障害圏の方ではその傾向が顕著ですが、問題なく社会生活を過ごせている人の中にも言葉に敏感な人は多く、決して病気に依るところではありません。
反応としてはこちらの何気ない一言に対して過剰に喜んだり悲しんだりする人もいれば、何倍もの罵詈雑言を浴びせてくる人もいます。そういった人との会話は毎回薄氷を踏むような思いであり、正直こちらのストレスも多大なものとなります。
ただそこでご機嫌をとって相手の好ましい言葉だけを選ぶことは、根本的な解決策にはなりません。上手に言葉を駆使すれば患者さんと仲良くなれるかもしれませんが、仲良くなることは目的ではなく、むしろ相手の依存度を上げるだけなのでマイナス面の方が強くなります。

言われたくないことを言われることは間違いなくストレスになりますが、まずは当の本人がなぜそうした言葉にストレスを感じてしまうかを知らなければなりません。言われたくないことの背景にはそれを言われたくない理由があり、それと向かい合うことが解決に向かうための第一歩です。
言われたくないことがある場合、"それを言わない人を探していく"よりも"それを言われても平気な自分を作る"ほうが長期的なメリットは大きいと私は考えます。そして、当然のことながら後者の方が長く険しい道のりです。


「この人はこんなことを言ったら傷つくだろう」ということを把握することは難しいです。初対面の人は言うまでもないですが、何度も話したことがある人でさえ意外なところで傷ついたり、逆になんとも思っていないことは多々あります。予測ができないからと言って、あらゆるデリカシーのない言葉をあらかじめぶつけてはこちらの人間性を疑われてしまいますし、ある程度は予測と経験から言葉を選別していかなければいけません。難しい作業です。

ただやはり、過ぎてしまった取り返しのつかない出来事について後から文句を言うのは良くないです。言われてもこちらもどうしようもありません。それはもう怒るか謝るしかありません。勘弁してください。

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