明日も精神科医

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Posted by kobayashi_kei on

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医者になる

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仕事、行きたくないですね。

世の労働者の大半がそうであるように、私も毎日仕事に行きたくなくて仕方がありません。毎晩寝る前には「死にたい」と思っていますし、朝には「なにかのはずみでみんな元気になって退院してないかな」とささやかな祈りをこめて起床しています。
それでも死ぬわけにもいかなければ奇跡も起きないので、重い足取りでペダルをこいで職場に向かうのですが、ロッカーを開けて白衣を着たあたりからなにかのスイッチが入り、そこからはなんとなく働くことができています。そしてあれよあれよとしているうちに気がついたら夜になって仕事が終わり、また「死にたい」と思いながら眠りに就く毎日です。

この白衣を着るという作業、これを通して私は医者というキャラクターを作り上げているようです。それはバットマンのスーツや大槻ケンヂさんの顔のスジのように、素の自分とは異なるなにかに変身させ、仕事に向かう上で必要不可欠なものとなっています。

ブルース・ウェインがバットマンになった途端にヒロイズムの塊になり暴力的になってなぜか声までガサガサになるのと同様に、私もまた"医者"になることによって様々な部分が変化していることを実感します。
例えば物腰、これは大きく変わります。患者さんを迎え入れる態度、話を聞く姿勢、相槌、口調は過剰に柔らかくなり、自分でもキャラを作り込み過ぎて気持悪いなと思うほどです。しかもときには相手を叱咤する教師のような役割や、相手の甘えを受容する母親のような役割もしなければなりません。
さらに言うと状況によってはにわか内科医、にわか救急医にも変身しなければいけないときもあって大変です。急変した患者さんのために一刻を争う治療を交感神経がビンビンに張り詰めた状態でやった後、ダッシュで別の病棟に行き、「はい、こんにちはー」と柔和な笑顔でまったりとした精神科医に変身する瞬間などは、自分が乖離してしまいそうな危機感すら覚えます。患者さんからも「なんかいつもと違う。若干目が怖い…!」とか思われているのかもしれません。

そしておそらく、感情や思考のあり方も変化しています。普段は95%くらいくだらないことしか考えていませんが、当然ながら仕事中は医療のことをちゃんと考えています。患者さんのことも自分で思っている以上に把握しているし、暇な当直のときでもどこか神経が張り詰めており、いつ何が起きても対応できるように脳と身体がスタンバイしています。そのせいか特に大したこともしていないのに、心身ともにやたら疲弊していることは珍しくありません。逆に患者さんの情報を覚えきれていなかったり、当直中に変にリラックスし過ぎているときは、医者に入りきれていない証拠であり、危険です。むしろ後者の方が疲労感は強かったりするため、メリハリの大事さは痛感するところです。


私は昔から人一倍変身願望が強い方なので、一般的な医師はここまでキャラクター作りにいそしんでいないかもしれません。しかしどんな職業の人であれ、自身を仕事モードに切り替えられるからこそ、辛い仕事でもなんとか続けていけるのでしょう。サラリーマンのスーツや建築現場のニッカポッカ、学生の制服などは言わずもがなですが、ギャルやオタクや大学生などがなんとなく似たような格好をしているのもまた、社会的生物として"変身"しているのかもしれません。

医学生の頃、私は医者としてやっていけるのか非常に不安でした。成績も悪いし体力もないし手先も不器用だしメンタルも弱いしで、それはいまだに何も改善していません。それでもやらざるを得ない状況が与えられている中でどうにか道を見つけ、いまのところクビにならずに働くことができています。

やる前からあきらめるのも一つの手ですが、案外やってみたら自分が思っている以上にやれることは多いのかもしれない。そう思うとまだまだ何にでもなれる気がしてきます。

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