明日も精神科医

スポンサーサイト

Posted by kobayashi_kei on

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ゼッタイにダメなもの。

Posted by kobayashi_kei on   0 trackback

ドラえもんに「ヘソリンガスでしあわせに」という話があります。

ある日いつもどおり先生に叱られ、しずかちゃんは出木杉とばかり仲良くし、野球をすれば失敗してジャイアンとスネ夫に袋叩きに、家に帰れば0点が見つかってママに怒鳴られ、グッタリしたのび太がドラえもんにすがります。
なんとかしてあげようとポケットに手を入れるドラえもんですが、今回は「いや、なんでもない」と一旦渋ります。思わせぶりなことをされたのび太は「世の中まっくらだァ。いますぐ世界の終りが来ればいい。」と絶望感むき出しでわめき始め、見かねたドラえもんが「しょうがないなあ」と、ひみつ道具"ヘソリンスタンド"を出します。

「へそから送り込むガスなんだけどね。心や体のいたみを消すんだ」と簡潔に説明し、のび太のへそにプシュと注入します。次第に「なんだか…、目の前が明るくなって……、バラ色に見えてきた。しあわせな気持ち!!」(※1)と満面の笑みになるのび太。喜んだドラえもんは「もっとためそう」と0点の答案を追加で持ち出し、ママの怒りを誘発します。しかしのび太は怒られてもちっとも何も感じません。「ふしぎ!なにをいわれても気にならないや!」とやはり笑顔。叱り疲れたママを尻目に今度はドラえもん、のび太の前に野球のボールを転がし、わざと転倒させます。頭から床に激突するのび太ですが「痛くもなんともない!」とのこと。「ガスのききめは、三十分間つづくんだ。」とドラえもんから説明を受けます。

「ヘソリンを吸えばこの世は天国。」と空恐ろしいフレーズを笑顔で叫びながら町へとくりだすのび太。再びジャイアンとスネ夫に絡まれ(理由は「ニヤニヤ見ていたから」)、再度袋叩きにあいますが、全くものともせずにニコニコしています。「のび太がこんなにがまん強いはずがない」と、のび太の後を尾けていると、思いきり野良犬に足を咬まれ、車にドーンとはねられ顔面から地面に激突しても傷一つなくニコニコしているのび太を目の当たりにし、衝撃を受けます(※2)。
「どうしてそんなに強くなったんだ。おしえてくれ」と頼みますが、のび太はやはりニコニコ。しかし突然のび太の全身に激痛が走ります(※3)。痛みを我慢できないのび太は慌てて帰宅し、出しっぱなしにしていたヘソリンガスを再注入します。「しあわせ…」と再び幸せいっぱいの顔になるのび太(※4)。そばで見ていたジャイアンとスネ夫は「そんないいものひとり占めするにするなんて。ちょっと貸せ。」とヘソリンスタンドを空地に運び出します。

ヘソリンガスを注入したジャイアンとスネ夫は「ためしになぐってみろ」とバットで互いの頭を殴り合います(※5)。ジャイアンの強烈な一撃に気絶するスネ夫!のび太とジャイアンは「気絶しちゃった!」と大はしゃぎ!「いやー、ぜんぜん痛くない」と次のコマでは平然と笑顔で話すスネ夫に対して「すげえききめ!」とまたも大喜び。またたく間に狂気はエスカレートしていきます。

噂がひろまり、町じゅうの小学生が空地に集まり、ヘソリンガスを求めます。ジャイアンとスネ夫は一回10円での商売をはじめようとし、のび太も一応いさめますが、基本的に幸せいっぱいなため深く考えることなく、なすがままにさせておきます(※6)。帰宅したドラえもんに事情を話すとドラえもんは大激怒。「あれはおそろしいガスなんだぞ!!痛がるってことはだいじなことなんだ。危険を知らせる信号なんだ。たとえば火の熱さに平気だったらやけどする。ひどい病気にかかっても死ぬまで気づかない。心の痛みだってそうだぞ。しかられても笑われても平気なら、どんな悪いことでも…」と力説します。じゃあなんでのび太の部屋に出しっぱなしにしといたんだと思いますが、のび太には全く通じず「それがどうした。」と一蹴されます。
ドラえもんが弱り果てていたところ、ガスの効き目が切れたのび太がその恐ろしさに気づき、ドラえもんに泣きつきます。

事態を収拾しようと飛び出した2人、町では小学生が「ひかり号にはねられても痛くないよな。東京タワーから飛び降りても平気だよ。」「30分おきに10円でしょ。大変よ。」「ママのさいふ持ってきちゃった」と恐ろしい会話を繰り広げています。おそらくこの時点で何件かの自殺、殺人事件が発生していた思われます。
空地では女子小学生がスカートを自らまくりあげて下着と下腹部を露出し「見えた、見えた。」と喜ぶ男子に対し、「見えたらどうだっていうのよ」と笑顔でガスの注入を受けています(※7)。ドラえもんとのび太が必死で止めますが、何の迷いもなくバットで殴ってくるため止められません。ジャイアンとスネ夫の母親、先生にも出動を要請しますが、ガススタンドに笑顔で張り付いて全く動こうとしない2人。依存の度合いは天井知らずです。

しかし短期間で使いすぎたため、あっという間にガスが無くなってしまいます。ジャイアンがガスの補充を要求し、ドラえもんは素直に従います。「入れてやらなきゃよかったのに」というのび太に対して「別のガスを入れたんだ。」とドラえもん。にわかに降り出した雨に「痛い!痛い!雨のつぶがいたい!」とジャイアンとスネ夫が駆け回ります(※8)。"おおげさにかんじるガス"を注入させることで、事態は収束したこととなり、話は終わります。



このガス、おそらくは軍事用に開発されたものと推測されます。現代にも存在するドラッグに様々な改良をほどこした、まさに22世紀のスーパードラッグです。
まず(※1)に見られる強烈な多幸感。これはヘロイン等のダウナー系ドラッグおよびコカインやMDMA(通称エクスタシー)といったアッパー系ドラッグの好ましい効果のみを抽出している印象です。
また(※2)に見られる強烈な鎮痛作用はモルヒネやフェンタニルといった鎮痛剤から引き出されものであり、車にはねられても平気でいることから、肉体を頑丈にする筋肉増強作用もあると思われます。後半に「ひかり号にはねられても痛くない」というセリフがあり、おそらく本心のものと思われますが、当然肉体のほうが持たないことが予想されます。
(※3)で認められるのはいわゆる離脱症状(禁断症状)です。いたずらに自分の身体に負わせたダメージの他にも、薬そのものが抜けたことによる苦痛もありそうですが、これは推測の域を出ません。
(※4)の描写はまさにこのガスの依存性の高さを物語っています。投与直後に多幸感をもたらす圧倒的なキレの良さ、そして抜けたときの明確な苦しみ。向精神薬でもデパスやハルシオンなど、効きがはっきりしているものほど依存性が高いと言われており、この天地のような落差により、追加の注入を迷う人間はまずいないと思われます。。
(※5)では攻撃性の亢進が認められます。後半でガスの流行を止めようとしたのび太とドラえもんをバットで殴るシーンがあり、このことから暴力に対する迷いがなくなり、だれかれかまわずに凶暴性が増していることがわかります。「ママの財布をもってきた」彼のママが悲惨な状態になっていないことを祈ります。PCP(フェノサイクリジン、通称エンジェルダスト)や最近話題になったバスソルトなど、一部で凶暴性が増すドラッグの報告がありますが、これはその改良版なのでしょう。
(※6)ののび太には思考能力の低下、善悪の判断能力の低下が認められます。倫理観や宗教的な教条などは完全に抜け落ち、上官の命令でいくらでも突撃できる便利な兵士が量産できると思われます。
(※7)は女性の性的な逸脱を思わせる描写です。覚醒剤やコカインなどアッパー系のドラッグでは性的な快楽を何倍にも増強させる効果があると言われ、特に女性でその効果が強いとされています。
(※8)で最後に出てきたガスは最初のものとは真逆の効果であり、痛み刺激の増強、そして不安や絶望なども"おおげさに感じるガス"なのではないかと思われます。おそらくこれは拷問用に開発されたと推測され、わずかな労力で絶大な効果をもたらすものと考えられます。


戦場でこれらのガスを用いることで、戦闘を円滑に進めることができることは明白です。効果が30分と短いのはおそらくサンプルなのでしょう、今回の件はドラえもんが過去の人間をモニターするために仕組んだ茶番と思われます。そう考えることで、ドラえもんがこんな恐ろしい道具を持っていること、一旦出すことを渋ってのび太が要求するように仕向けたこと、部屋に置きっぱなしにしたこと、最後に"大げさに感じるガス"を入れ替えたことなどの不自然な行動を説明することができます。

そしてこの"ヘソリン(HESORIN)"という名前、"HEROIN+S(スピード。覚醒剤の俗称)"のアナグラムだったら藤子先生すごすぎるなと思いますが、それはさすがに深読みのしすぎでしょうか。


念のため最後にちゃんとしたことも書いておきます。
これまでに薬物依存で精神科受診となった方を何人も見てきましたが、一度薬に溺れた人間がまともな人生を取り戻すことは、想像を絶する時間と労力を要します。
それは真っ暗な深い穴から少しずつ這い上がっていくような作業であり、本人はそこから抜け出そうとする気力も、抜け出す方法を考える思考力も全て薬に奪われてしまっています。光の見えない中でもがき苦しみ、周囲もなんとか救いの手を差し伸べますが、結局は再び薬に手を出してさらに深い穴に落ち込んでいくことの繰り返しです。
本人が生活を取り戻すことへの強い意志が重要ですが、周りが決して見捨てずに手を差し伸べ続ける根性も同じくらい必要とされます。

まずは手を出さないこと、それが全てだと思います。22世紀のヘソリンが実用化されないことを祈ります。

ヘソリン

スポンサーサイト

Trackback

trackbackURL:http://ashitamoseishinkai.blog.fc2.com/tb.php/24-f9ade54e
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。