明日も精神科医

スポンサーサイト

Posted by kobayashi_kei on

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

会うインターバル

Posted by kobayashi_kei on   0 trackback

"会って話す"ことは精神科診療の基本です。話の内容に耳を傾けるだけでなく、相手の表情、口調、しぐさ、身なり、態度などから、その人にまつわる多くの情報を得ることができます。
内科や外科に比べて触診や検査で得られる情報が少ないこともあり、精神科診療に於ける面談のウエイトは高く、そこから的確な診断に結びつける能力が求められます。

そしてあらゆる人間関係で言えることですが、長く話せば話すほど、会う機会を増やせば増やすほど、良くも悪くも人間的な距離は縮まり、相手に対する理解は深まる気がします。
つまり患者さんとできるだけ頻繁に会い、できるだけ長く話すことで、より良い診断、治療に結びつけることができるのです。精神科医になる以前、私はそう考えていました。

実際の診療において、例えば外来では短くて1週間に1回、だいたい4週間に1回くらいのペースで受診してもらいます。そして話ができる時間は長くて10分、目標としては5,6分程度です。これでもある程度の状態を聞くことができますが、その人を知るための持ち時間としてはやはり短いです。"med check(精神科医はただ単に薬のチェックをしているだけ)"と揶揄されるのも仕方だないことと思います。(このあたりの大変さについてはまたいつか書く予定です)

では入院のケースではどうか。病状の悪化により自宅での生活ができなくなり、入院となった場合、当たり前ですが一日中病院にいることとなります。そして医師も大抵病院にいるため、いつでも会いに行くことができます。
実際に入院して間もない患者さんのところには、ほぼ毎日会いに行くことが多く、これは入院直後に劇的に改善・増悪する人が多いこと、入院によるストレスをマネジメントするためなどの意味があります。
しかし、入院して1週間もたつとだいたい週に2回会って話をするペースとなり、さらに経つと週に1回の診察くらいになってしまいます。
「怠慢だ。もっと働け。患者さんを大切にしろ」と他科の医師や医師以外の人からクレームが来そうな話であり、実際に私もその診療方法には疑問を持っていました。そして一時期、なるべく遅くまで居残って診察の回数を増やそうとがんばった時期がありました。

それをやってみて思ったことは、張り切って診察回数を増やすことにはメリット・デメリットがあり、結局張り切ろうと張り切るまいと、そのアウトカムは大きく変わらないのではないかということでした。
まず大きなメリットとして、患者さんの満足度は上がります。「このドクターは私のことを大事にしてくれている」と特別な感情を持ってもらうことができ、良好な医師・患者関係の上で治療を行うことができます。これはとても重要です。
一方デメリットとして、面接そのもののクオリティが下がってしまうことが挙げられます。一人の精神科医でだいたい常に30~40人の入院患者さんを受け持っており、一人に30分かけたとしたら、それだけで15~20時間かかってしまいます。精神科の医療面接は予想以上にエネルギーを使う仕事です。こちらが疲弊しているとかなり内容が薄くなってしまい、感情的にもなりやすくなり、ときには不適切な言葉も出てしまうおそれも出てきます。デリケートな患者さんほど、質の低い面接を多くするよりは、なるべく健全な精神状態できちんとした面接を行いたいと、私は考えます。
さらに付け加えると、あまり頻繁に会いすぎると逆に患者さんの病状がわからなくなるというデメリットもあります。同じ訴えを何度も聞き続けていると「この薬が効いていないんじゃないか」という不安が生じ、焦った増薬に走りがちになります。これは患者さんの身体的負担をいたずらに増やし、さらには最終的にどの薬が効いたのかわからなくなるというマイナス面を多く含んでおり、避けるべき傾向です。


こうした実感は、いかにも自分の未熟さからくるものであり、将来的にはもっとタフで良質な医療を常に提供できる医師になりたいとは思っています。
しかし一方で、その人を診るための段階的な"ステージ"があるのではないかとも実感しています。最初はその人を知るためのステージ、治療を始めていくステージ、そして治療経過を見ていくステージなど、それぞれの段階によって患者さんとの上手な距離感を保った方が、良い結果を及ぼすというイメージです。
むしろこちらを意識した方が、精神科診療としてのクオリティは上がるのではと考えています。

いつも一緒にいる人よりも久しぶりに会った人の方が、その人の重大な変化に気づくこともあります。がむしゃらに会えば会うほど、相手のことを知ろうとすればするほど、良好な人間関係を築けるわけではないのです。

恋愛指南のようなまとめ方ですね。

スポンサーサイト

Trackback

trackbackURL:http://ashitamoseishinkai.blog.fc2.com/tb.php/21-94d09e29
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。