明日も精神科医

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去る人

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精神科の外来では、日々多くの人が外来を訪れ、医師はその治療にあたっています。
そして同時に多くの人が外来から去っていき、通院をやめ、治療を終了します。

通院をやめる理由は様々です。病気が治った人、病院に通うのが面倒になった人、仕事が忙しい人、医師が気に入らなかった人、薬を飲みたくない人、引っ越した人、病院に通えないほど症状が悪くなった人、亡くなった人など、やむを得ないものからそうでもないものまで、人には多くの事情があります。

そして実際に医師との順調な治療関係のもと「治りましたね、おめでとうございます。これでもう治療を受ける必要はないですよ」と円満に終了することは、意外なほど難しいです。おそらく他の科に比べても精神科は、両者の合意のもとでの治療終了は特に少ないのではないかと思います。

その最大の理由として、精神科の病気は「治った」と言い切ることが非常に難しく、長期の治療関係を必要とすることが挙げられます。
病気が良くなったことを表現する言葉として、"治癒"と"寛解"という言葉がありますが、精神科では"治癒"の方はほとんど使いません。"治癒"は病気そのものが根本的に良くなることを指します。例えば蚊に刺されて腫れていたのが元に戻ったとしたら、それは"治癒"です。また別のところを刺されて腫れるかもしれませんが、それはまた別の話です。
一方で"寛解"は、慢性的な病気が改善し、症状がほぼなくなった状態のことを指します。癌や白血病、膠原病、精神疾患などで使われますが、ここに含まれるのは、同じ病気が再び再燃、再発してしまうリスクを持っていることです。
悲しいことに精神疾患は一度寛解状態まで良くなったとしても、再発、再燃することがあります。その後どのくらいの確率で再発するかを予測することも難しく、予防的な治療を続けて行く必要があります。

もちろん少しずつ薬を調節し、再発がないことを慎重に確認し、患者さんともよく話し合った上で治療を一旦終了できることもあります。しかしその翌日に家族から電話があり「なんで通院をやめさせたんですか?再発したらどうするんですか!」と言われることも珍しくなく、円満に終了することの難しさを物語っています。


そして円満に終了できるケースが少ないということは、それ以外の理由で治療をやめた人には、かなりの再発リスクを抱えていることになります。
明らかに調子が悪くなって来ることができない人や、再発リスクがかなり高い人には連絡を入れたり、訪問して様子を見に行くこともあります。しかし多くの場合、そこまでのフォローができていないのが現状です。

正直なところ、本人の意志で通院を始めたのだから、通院をやめることも本人の意志で決めてしかるべきと思います。再発のリスクについてもそれなりには説明しているつもりです。自己判断で治療をやめるのならば、それを無理には引き止められません。
しかし場合によっては再発したときに、自殺してしまうかもしれない、誰かを負傷させてしまうかもしれない、行方不明になって帰ってこないかもしれない、そして強制入院になってしまうかもしれない。そうなると本人、家族、医療スタッフ共に、非常に辛い思いをすることになります。やはりそれは避けたいところです。


お金儲けがメインではないので(それも大事ですが)、患者さんを引き留めることにそれほど大きなメリットはありません。むしろ現在の患者さんの数を思うと、引き留めないことのメリットの方があるくらいです。
しかし通院の意志がない人に通院を続けてもらうかどうかは、常に葛藤があります。再発のリスクはある、しかし薬を飲むのも辛いだろうし、仕事も忙しいかもしれない、精神病院に通っていることそのものが本人にとってレッテルになっているのかもしれない。様々な要素を加味し、話し合い、本人にとって何が本当に幸せなのかを検討し続けなければなりません。

"本当の幸せ"とは?

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